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1.法人税関係
@税率
(イ)法人税
現在の法人税率は23.9%ですが、平成28年4月1日から平成30年3月31日の間に
開始する事業年度から23.4%に、平成30年4月1日以降に開始する事業年度か
ら23.2%に引下げられます。
(ロ)地方法人税
現在は法人税額×4.4%ですが、平成29年4月1日以降に開始する事業年度から
10.3%に引き上げられます。
また、地方法人特別税は廃止となります。
A生産性向上設備等の特別償却制度
最新の機械などを購入した際、即時に全額又は50%を償却できる
又は税額控除できる制度を設けていましたが、
平成29年3月31日をもって終了となります。
B減価償却(建物付属設備、構築物)
通常これらの資産については、法人では定率法で減価償却を
行ってきましたが、平成28年4月1日以降に取得したものは、
定額法で減価償却を行うことになります。
C企業版ふるさと納税
現在、地方公共団体に対して寄付をした場合は全額損金に算入できますが、
平成28年4月1日以降に開始する事業年度から、一定の地方創生事業に対して
寄付を行った場合、更に法人事業税、法人住民税の税額控除(法人事業税は
最大寄付額の10%、法人住民税は最大20%)が認められるようになります。
D雇用促進税制
増加雇用者数のカウントが無期雇用かつフルタイムの方が対象になります。
また、雇用者数が増額した場合の税額控除と所得が増額した場合の税額控除が
一定の調整のもと併用できるようになります。
2.消費税関係
現在は8%の単一税率ですが、平成29年4月1日より軽減税率が適用となり、
酒類、外食サービスを除く飲食品、定期購読契約がされた週2回以上発行
される新聞は8%、上記以外は10%と複数税率になります。
3.納税関係
平成29年1月4日以降、国税をクレジットカードで納付することが可能になります。
4.延滞税関係
@税務署から調査を行う旨の連絡が来て、実際に調査が入るまでの間に
自主的に修正申告を行う場合、これまでは過少申告加算税はかかりませんでしたが、
そのような自主的修正申告に対しては5%〜10%の加算税が課されるようになります。
(平成29年1月1日以降申告期限が到来する事業年度)
A重加算税(現行35%)が課されることとなった場合、
その5年以内に重加算税が同じ税目で課されていた場合、
重加算税率は45%になります。
(平成29年1月1日以降申告期限が到来する事業年度)
5.所得税関係
@空き家対策
被相続人が居住していた家屋を相続後3年以内に譲渡した場合には、
譲渡益から3,000万円を控除することができます。
(平成28年4月1日から平成31年3月31日までの間に譲渡した場合)
A三世代同居改修工事
工事、改修をして平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に
居住したときに、税額控除が受けられるようになります。
いかがでしょうか?
多岐に渡るものの、それほど目玉となる改正がない、という印象です。
これらは3月末までに国会を通り、
4月1日施行の法律で正式に決まってくると思われます。
消費税の軽減税率に関する補足説明
この中で皆様の関心が高いのは、
消費税の軽減税率ではないでしょうか?
以下、軽減税率に関する補足説明です。
平成29年4月に消費税は10%に上がりますが、
酒類を除く食品と、一定の条件を
満たす新聞に関しては8%で据え置かれます。
皆さまはどう思われますか?この軽減税率。
「食品の消費税が安く済むなら、それでいいんじゃない?」
まあ、確かに…
純粋な消費者(給与所得者や年金生活者)は確かにメリットを受けます。
じゃあ、どれくらい?
政府の試算によると年間8,300〜17,000円程度。
一人当たり?
いえ、世帯当たりです。
しかも年間ですよ?
また、メリットが大きいのは高額所得世帯です。
そりゃそうですよね、
高額所得世帯は同じ食材を買うのにも、
単価が高いものを買う傾向にあります。
(お金持ちは、お肉を買う際、
私のようにグラム98円の合挽きなんて買わないです…)
そもそも軽減税率は「低所得者対策」のはず。
その意図は全く逆に働いているわけですね。
これだったら…1世帯当たり1万円を給付するなど、
簡易な方法で実施した方がいいと思いませんか?
なぜなら、軽減税率が適用されると
事業者の経理処理がかなり面倒になるからです。
「軽減税率って、食品小売や外食産業とかの問題でしょ?」
確かに一番大変なのはこの業界でしょう。
レジも新調しなければならない等、金銭的な負担もでてきます。
でも、一般企業の経理も面倒になります。
例えば社内でちょっとした慰労会をやろうと、
コンビニで、ビール、おつまみ、
お菓子などを買ってきました。
全部で5,400円。
今なら「福利厚生費 5,400円(税率8%)」で終了です。
でも軽減税率が適用されるとどうでしょう?
コンビニのレシートは1枚ですが、
よく見ると「ビール3,300円(消費税率10%)
食品2,160円(消費税率8%)」などと書かれているはずです。
この取引は会計ソフトに入力する際は別経理、
2行で入力します(消費税率が違うため)。
同じ勘定科目でも、消費税率の欄に
「課対仕入10%」
「課対仕入8%」
(弥生のケース)
と分けて入力しなければなりません。
また、当方に帳簿入力を依頼されているお客様は、
税率が分かるような資料を頂くことになります。
(領収書原本の提示、エクセルの経費明細に明記、など)
また、お蕎麦屋さんの領収書なども「接待で店内飲食=10%」
「残業のため出前を取った=8%」など
同じ領収書でも税率が違う場合があります。
領収書に税率が明記されていればいいですが、
これらの確認をするのも経理の仕事になってしまいます。
本来8%の軽減税率が適用されているのに、
10%として処理してしまうと、納付すべき消費税額が少なくなり、
税務調査の際に問題となります。
確かに上記の例のような取引は、さほど多くはありません。
しかし、消費税を納付する義務がある事業者のすべてが、
事務負担増となるのは確実。
来年の4月からは、かなりの混乱があるものと思われます…。
さらに平成33年からはインボイス(税額票)が導入されます。
これがまたさらに面倒なのですが…この話題はまた別の機会に。
今回の消費税改正のことで、何かお困りの方は、早めに担当者とご相談ください。
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